thyroid 甲状腺・内分泌について

どんな病気?

甲状腺とは、頸部の前面(喉ぼとけの下側)に位置します。
蝶が羽を広げたような形をして気管を包み込むようにあり、大きさは約5cm×4cm×1cm(縦×横×厚さ)で、重さ15gくらいの小さな臓器です。

正常の甲状腺は柔らかいので外から手で触っても分かりにくいですが、腫大してくると触ることができ、見ただけでも腫大しているか分かるようになります。

甲状腺は、食物に含まれるヨウ素をもとに、甲状腺ホルモンを合成し、血液中に分泌します。
甲状腺ホルモンは、全身の多くの細胞に作用し、体の発育の促進、エネルギーの代謝と産生、いわゆる新陳代謝を行う役割があります。
甲状腺ホルモンは、多すぎても少なすぎても体調に変化を生じます。

甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモンが多い状態)

出現する可能性のある症状

  • 1. 易疲労感(疲れやすい)、倦怠感(だるい)
  • 2. 下痢、軟便(便が軟らかい)
  • 3. 暑がり、発汗、微熱
  • 4. 頻脈(脈が速い)、動悸(胸がドキドキする)
  • 5. 甲状腺の腫大(頸が腫れてくる)
  • 6. 食べても体重が減る(体重減少)
  • 7. 集中力の低下、落ち着きのなさ
  • 8. 手指振戦(手のふるえ)
  • 9. 眼球突出(目が出てくる)

代表的な疾患

バセドウ病、無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎、プランマー病 など

甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンが少ない状態)

出現する可能性のある症状

  • 1. 易疲労感(疲れやすい)、倦怠感(だるい)
  • 2. 便秘
  • 3. 寒がり、体温の低下
  • 4. 徐脈(脈が遅い)
  • 5. 甲状腺の腫大(頸が腫れてくる)
  • 6. 食べないのに体重が増える(体重増加)
  • 7. 皮膚の乾燥、かさつき
  • 8. 脱毛
  • 9. 動作が鈍い

代表的な疾患

橋本病(慢性甲状腺炎)、術後甲状腺機能低下症(バセドウ病の手術後)、アイソトープ治療後、粘液水腫 など

バセドウ病

自己抗体(TSHレセプター抗体[TRAb])が自分自身の甲状腺を刺激するため、甲状腺ホルモンが増加する疾患です。 甲状腺機能亢進症を呈するので、それに伴う症状が出現します。

また、TSHレセプター抗体は眼の周囲に炎症を引き起こし、眼痛や眼周囲の腫れ(眼輪筋腫大)をきたすこともありますが、眼球突出まで至るのは1割程度とも言われています。

また、TSHレセプター抗体が陽性とならない場合もあるため(全体の5%程度)、採血以外に詳細な経過確認や画像検査(超音波、シンチグラフィ等)を組み合わせると望ましいです。

診断確定後は薬物療法(内服)を開始することが多いですが、重篤な副作用が起こる可能性があるため、薬物療法を開始した直後(特に3ヶ月間)は間隔を空けずに通院することを心がけましょう。
一方、副作用が起こってしまった際はアイソトープや手術療法への治療の変更を検討します。

橋本病

自己抗体(サイログロブリン抗体[TgAb]、甲状腺ペルキシダーゼ抗体[TPO抗体])が自分自身の甲状腺を破壊するため、慢性的な甲状腺の炎症をきたす疾患です。

甲状腺の破壊により甲状腺機能低下症を呈するので、それに伴う症状が出現します。
その際は、薬物治療(内服)を開始します。
一方で、自己抗体が陽性でも甲状腺機能が低下しない場合もあり(全体の10~20%)程度、その場合は定期的な採血で経過をみます。

甲状腺ホルモンを合成するのにヨードの接種は必要不可欠ですが、逆に過剰になりすぎるとホルモン合成が抑制されてしまいます(Wolff-Chaikoff効果)。
そのため、甲状腺機能低下症となった際はヨードの過剰摂取を避けましょう。

破壊性甲状腺炎(亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎)

甲状腺が破壊されて甲状腺ホルモンが血管内に漏出するため、血中の甲状腺ホルモン濃度が増加します。
「バセドウ病」との鑑別が重要で、身体所見や採血(甲状腺ホルモン値、甲状腺自己抗体、白血球数、炎症所見など)から診断をします。

亜急性甲状腺炎では、頸部の疼痛(移動することもあります)や発熱を示すことが多く、無痛性甲状腺炎では頸部の疼痛を示すことはないものの橋本病に合併することがあります。

両疾患とも最終的に治癒しますが、稀に永続的に甲状腺機能低下症となる方もいます。

甲状腺腫瘍

甲状腺内の腫瘍は、良性腫瘍、過形成(腫瘍もどき)、嚢胞(組織液のたまり)、悪性腫瘍、機能性甲状腺結節(甲状腺ホルモンを産生:プランマー病)など多岐にわたります。

無症状が多く、健診や頸動脈超音波検査で偶然発見されることがあります。
良性と悪性の鑑別が重要ですので、甲状腺超音波検査を行い、形態、サイズ、血流などを確認します。

場合によっては組織の細胞をとる検査(穿刺吸引細胞診)も行う必要もあるため、その際は甲状腺疾患の専門医療機関へのご紹介も検討致します。

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